会場に設置された巨大なスクリーンには、物理的にフィルタリングされた不鮮明な映像が投影され、また空間全体にも不明瞭な音響が充満している。この映像と音響は、いずれもインターネット上にアップロードされた膨大な量の動画を、独自のアルゴリズムでリアルタイムに解体/再構成しているものである。双方の素材となる断片化された動画を解析し、その輝度、音声データの振幅(音量)の数値にもとづいて、それぞれがサイン・カーブを描くように、1フレームごとに並べ直すことで構成している。これにより、素材となる動画が持っていたはずの意味が剥奪され、サイン・ウェーブを構築するための抽象的な光と音へと還元される。全ての音は複数のサイン波を組み合わせることで表現可能である。しかし、今作では、多くの素材を切り刻み、つなぎ合わせることでひとつのサイン波をつくり出す。
観客の参加の意味を改めて問い直すインスタレーション。